2009.11.12に行われたコンピュータ&ネットワーク EXPO’09 広島 カンファレンスレポート その3
【演 題】IETF広島会議開催記念講演会 主催:広島市
【テーマ】「環境とICTについて~学校発!グリーンICTの取組~」
【講 師】東京大学大学院教授 江崎 浩 氏 発表者/広島市立広島工業高等高校
<概要>
市立工業高校のCO2濃度計測実験の紹介&江崎 浩 氏の活動についての紹介
<詳細>
市立工業高校の学生によるCO2濃度計測実験では、生徒がCO2センサーボックスを作成しR2沿いや屋上農園にそのセンサーボックスを設置。ネットワークを利用してリアルタイムに濃度変化を計測するシステムも作成し、CO2の濃度をリアルタイムで計測・観察を行っている。過去に東京大学と海外での発表会も行った実績がありその様子が紹介された。
次に、江崎 浩 氏の活動について紹介された。まずは、2つの活動方針について説明があった。
1)快適な作業空間の提供
職場の昼休憩などで電気を消灯して節電することがよくあるが、人間は本能的に
暗い中で過ごすと精神的なストレスを感じる傾向がある。これは節電(省エネ)は
行っているが、仕事をするモチベーションのダウンにつながる(能率ダウン→利益ダウン)。
それよりも快適な作業空間をつくることによって得られるメリットを考えるべきである。
(気持ちの良い職場→能率アップ→企業の利益アップ)
2)道徳を忘れた経済は罪であり、経済を忘れた道徳は寝言である
単純に我慢することだけでは取り組みは広がらない。また、我慢が続くと人間の活動
意欲も低下してしまう(人の活動の低下→経済が滞る)。だから我慢するのではなく
楽しみながら取り組みを行うしくみ(楽しみながら省エネを行う等)を考えていかないと
いけない(ここで人間の知恵が重要となる)。
また、快適な空間の提供は、米オバマ大統領も積極的に取り組んでいるスマートグリッドにも繋がる。
先の活動方針がうまく適用された事例として、インドのある企業の事例では、窓口にCO2センサーを設置しネットワークに接続。また、空調設備も同じくネットワークに接続している。
人間はCO2の濃度が高くなると眠たくなる→眠気を我慢して仕事をする(もしくは眠ってしまう)→仕事の能率がダウンする→仕事を片付けるために残業をする→人件費が高くなる、というように職員にとっても企業にとってもデメリットとなる。
このため、ネットワークに接続したCO2センサーによって職場のCO2濃度を監視し、ある一定の濃度になると空調設備によって自動でCO2濃度を下げるようにしている。これによってこれまでより仕事の能率があがり企業の利益もアップした。
最後に、こういった観点を活かし未来に向けて都市設計をすることがスマートグリッドの実現に深く関わっていくと講演が締めくくられた。
<所感>
講演中に『快適なおつりで省エネする』という表現があり、大変印象深かった。
これまでのように論理的な手順による仕事の効率化も有効な手段だと思うが、それを実施するもの(人)に負担がかかってしまうことも少なからずあると思う。それが非常に優秀な方法だったとしても長い目で見た場合、持続・拡大の可能性は低いと思う。それよりも人に本来備わっている資質を存分に発揮できる環境を提供することが本人にとっても社会にとってもメリットが大きい。大変共感できる内容だった。
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